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学ぶことをしなかった人の結末 [メデイア 言論]

鷲田小彌太の「学ぶことの法則」にて、受験勉強の重要性について述べられている。

今さらみたいなテーマだが、諸外国との比較で日本人がなぜ優位なのかがわかる内容となっている。




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定理4 受験勉強をおろそかにするな


[証明1] 受験勉強さえしなかったもののだらしなさ


理屈っぽくいえば、「勉強」は「労働」の変形です。労働は、近代社会で、初めて人間の本質的活動とみなされました。それは、資本主義(アダム・スミス)でも社会主義(カール・マルクス)でも同じです。ただし、インドのように、前近代社会のシステムが濃厚に残っているところでは、労働は、しなくても済ますことができればベターな、「必要悪」であり、人間の活動の墜落携帯である、とみなされています。そういう国や地域は、いまでも世界各地に残っています。人口比からいっても、勤労精神が確立している国より、うんと多いのが現状です。


「勤労精神」、これが近代社会を前へ前へと引っ張りました。日本社会では、勤労は、人間のあるべき姿であり、勤労が人間の幸せの源泉だというのが常識でした。しかし、「勤労精神」が常識になっている世界は、実のところ稀なのです。社会主義の「崩壊」は、国民多数が勤労精神をもつことに失敗したことの結果でもありました。


社会と人間の仕組み(論理や整理)は、生産や労働を「モデル」に組み立てられてきました。朝七時に起きるのは、八時半の学校。九時の会社の始業に間に合うためです。一二時に昼食を摂るのは、たんなる昔からの「習慣」ではなく、労働の「合間」、休憩時間なのです。

だから、労働とまったく無縁な生き方をしている人は、この労働社会と圧倒的多数の労働する人のリズム(時刻感覚)とマッチしません。思考や行動のリズムが合わないんですね。


勉強も、生活リズムをきちっと刻むという点では、労働と同じ働きをします。学校へ行くということは、労働社会のリズムと同調する訓練でもあるのです。逆にいうと、学校へ行かないと、この誰もが身に付けているリズムを得ることができない、ということになります。すっと生産活動の中に入ってゆけないことになります。普通の人とは少し違った人間が出来上がります。パンクチュアリティ(時間厳守)の人間になれません。


ところが、後期資本主義といわれている現在、労働時間が大幅に縮小し、労働部分と非労働部分との比率が逆転し、労働のリズムが人間の生活=人生(ライフ)のリズムの中心を占めなくなりつつあります。自由時間が多くなるということは、各人が、労働のリズム、時限で考え、行動しなくてもいい部分が多くなる、ということです。休日、朝、汝に起きようが、いつ、昼食を摂ろうが、自由だということです。各人が、バラバラに一日を過ごしても、構わない、ということです。だから、いつでも開いており、好きなときに購入できる、コンビニが必要になるのも、当然です。夜更かしもOKです。社会がどんどん不定型になり、気ままになり、だらしなくなるのは、この理由からです。肯定的にいえば、自由になる、ということです。


受験の弊害、学歴社会のいかがわしさについて、どれだけ議論しても、市足りないと思います。しかし、受験も「勉強」です。それも、締め切り日が決まった、競争の激しい、成甲書房が必ずしも約束されていない、誰にでも配当、報酬がかなうというわけにはゆかない、「厳しい労働」(ハードワーク)です。それを経験しないで育った子が、労働社会、労働人間のシステムやリズムに同調しにくいには、当然です。


私見はつまりません。いい点数をとるのに、どれほどの意味があるのでしょう。しかし、よほど、自己管理能力をもっている人でないかぎり、試験がないと、学ぼうとしません。いつ学んでもいいということで、万事に締まり(締め切り時間)のない、困難(ハードワーク)に耐えることのできない人間になります。いい加減な人間ですね。


私は、一人前の大人になる「訓練」の視点からいうと、「兵役」の義務がなくなった現在、単に学校に行くだけでなく、まともな受験勉強もしないで過ごすと、働き始める年齢が上がり、すべてが必ずしも労働のリズムで動かなくなった社会の下では、背骨のない、歯止めのない、関節のバラバラな人間ができあがっても仕方がないことだ、という点を強調したいと思います。


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著者は兵役経験との対比で述べている。


私の学生時代、体育系の学生が就職先に恵まれた。

留年続きでサークル等の経験ない学生は就職試験に何度も落ちた。


私は政治的には保守だが、保守の言論人の学歴をWikipediaなどで検索すると、大学中退者が多い。左翼の学者が日本学術会議の肩書などで大っぴらに政治活動しているのと比較すると、保守言論のひ弱さの原因が受験勉強や大学時代の手抜きにあると指摘せざるを得ないのである。

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U3

人によると思います。
by U3 (2022-12-23 12:20) 

駄洒落好きな庭師

渡部昇一(故人)は大学時代手抜きせず勉強したと著書で述べています。
by 駄洒落好きな庭師 (2022-12-23 14:28) 

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