SSブログ

美しいショパン [音楽・ドラマ・映画]

クラシック初心者時代、中村紘子が演奏するショパンの有名曲をよく聴いた。

ただ、彼女が全盛期、コーヒーのCMに長期間出演したこともあり、甘さたっぷりのショパンの固定概念が残像として残ってしまった。

その後、これら有名曲を毎日聴くことは次第に受け付けられなくなった。


一方、(甘さのない)ショパンの難曲を上手にピアノを弾ける演奏家はたくさんいる。ポリーニはその代表格。芸術家として評価すべきレベルのレコードとして、ショパンのエチュードがある。この演奏は、他の演奏家と比較し圧倒的な演奏として評価されている。音楽評論家吉田秀和の評価もそうなっている。


しかし、ショパンに限って言うと、ポリーニの演奏は、甘ったるさがなく、品格を備えた素晴らしいものなのであるが、何か足りない気がする。


しかし、近藤由貴が弾くショパンは、そのようなことはない。

心に響くのである。彼女が演奏したショパンの「別れの曲」は、普通のピアニストの場合、悲しい別れを聴きながらイメージしてしまうが、彼女の場合は美しい別れに聴こえてしまう。


近藤マジックと言っていい。


ショパン 別れの曲 エチュード Op.10-3 ピアニスト近藤由貴/ Chopin Etude Op.10 No.3 Tristesse,Yuki Kondo





ノクターンはどうか。全曲演奏したものはないが、ノクターン第2番安心して聴ける。ノクターンは安心感が重要な要素。演奏家としての主張を極力抑え、ほっとするひと時が味わえる。甘ったるさもない。


ショパン ノクターン第2番 ピアニスト近藤由貴/ Chopin Nocturne Op.9-2,Yuki Kondo【クラシック名曲】



子犬のワルツについては、ともすればトリッキーな演奏が多い中、彼女は右手と左手が同期した正確な演奏を試みている。耳でかなり細かい音を聴き分ける能力がある、素晴らしい耳をしていると思う。


子犬のワルツ/Chopin Minute Waltz 近藤由貴 Yuki Kondo



ワルツ集最初の曲で、ありふれただるさ感が漂うせいで、ワルツ集の中で一番聴きたくない曲であるが、彼女の演奏は、酒に例えると上善水の如し的水準に仕上げている。


ショパン:華麗なる大円舞曲 Op.18 ピアニスト 近藤由貴/Chopin: Grande Valse Brillante Op.18, Yuki Kondo



幻想即興曲は、演奏家としての誇張というか主張を控えた、スッキリとした演奏である。


ショパン: 幻想即興曲 ピアニスト 近藤由貴/Chopin: Fantasie Impromptu Op.66, Yuki Kondo



軍隊ポロネーズは、キレがあり、マシンガンにように畳みかける重層な演奏である。


ショパン:軍隊ポロネーズ ピアニスト 近藤由貴/Chopin: Military Polonaise Op.40-1 Piano, Yuki Kondo




演奏テクニック的には、彼女以上の演奏家はいる。が、彼女は、原作に忠実かつ美しいショパンを聴き手に提供しようとしている。彼女の演奏を聴いて、ショパンを聴き直す気になった。


「ショパン」という月刊誌にて彼女のことが紹介されたそうである。

近藤由貴.jpg



私にとって、今、コンサート会場で聴きたい演奏家は近藤由貴ただ一人である。



nice!(46)  コメント(8) 
共通テーマ:音楽

nice! 46

コメント 8

横 濱男

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
by 横 濱男 (2024-01-07 10:08) 

駄洒落好きな庭師

横濱男様
ことらこそ宜しくお願いいたします。各地のツアー写真、楽しみにしております。
by 駄洒落好きな庭師 (2024-01-07 10:53) 

かんたんお小遣いかせぎ

コメントありがとうございました
私も業種を絞らず、高配当5%程度の銘柄を狙っています
by かんたんお小遣いかせぎ (2024-01-08 16:17) 

駄洒落好きな庭師

かんたんお小遣いかせぎ様
どうやら同じ方針のようですね。
by 駄洒落好きな庭師 (2024-01-08 18:51) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

クラシックは余り聴かないけど、ショパンは好きです。
記事を見て、近藤由貴さんのショパン聴いてみたくなりました。



by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2024-01-08 20:31) 

駄洒落好きな庭師

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)様
ショパンについては有名曲限定となりますが、有名ピアニストよりも近藤さんの
演奏の方が優れていると思います。



by 駄洒落好きな庭師 (2024-01-09 05:05) 

おと

美しい音、心が洗われるような演奏ですね♪
思わずオフィシャルサイトを見てきました。
2月に埼玉でリサイタルがありますね^^プログラムも素敵!
いつか、生演奏を聴きたいです。
by おと (2024-01-10 01:27) 

駄洒落好きな庭師

おと様
テクニック、芸術性という点ではポリーニや辻井伸行が勝っていると思いますが、ショパンの有名曲に関しては彼女の演奏は、素晴らしく、微小時間のメトロノームを刻むタイプの演奏スタイルであるように思います。
by 駄洒落好きな庭師 (2024-01-10 07:57) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。